「世界でいちばん好きな人」

一曲目「世界でいちばん好きな人」は、「あえてヒネらずにシンプルにした」と KAN 本人が十分に自覚して、ましてやそれを全面的にアッピールしている楽曲。そこの意を汲んでやらねばならぬ、とは感じながらも、かといって「シンプルすぎてダメ」という評価が妨げられることはないだろう、ということは言えるのではないかと思います。

よって直感的にひとことで片付けてしまえば、退屈な曲です。何のヒネりもないバラード。

転調ブリブリ自由自在、半音上げたり下げたり、突拍子もないところにメロがいっちゃったり、ときにはフェイクったり・・・そんなヒネ具合が KAN の持ち味のひとつで、「あえて」の理屈ももちろんわかるのですが、結果的にはやはりう〜んどうなんでしょうと唸ってその場に呆然と立ち尽くすしか対処策はありません。

こないだたまたま「松浦亜弥のオールナイトニッポン」を聴いていたら深夜の 2 時 40 分頃にこの曲がかかっていたんですよ。もうしつこく言ってるように KAN は松浦やモーニング娘。らと同じアップフロントという事務所つながりですから、こういう具合に絡むことも必然的にあるのです。で、このバラードをいったいどれほどの長さで流してくれるのかと思って聴いていると、いわゆる一番も二番も大サビも通過して、ストリングスの間奏に入ったところでようやく CM へ行ったのでした。

なんだか長くかけてもらって申し訳ない気持ちでした。

ちなみにそれでも KAN サイドとしてはこのアルバムの中ではこの曲が何故か一推しらしく、シングルカットとかはまだ未定のようでもいろんな媒体で重点的に「準シングルカット曲」みたいな扱いをされています。たしかに完成度は高くって、ぼくもよく口ずさんでしまいますし、おそらく理論的には長く聴くに耐えうる作品として成立しているのでしょうが、一歩引いて考えてみると一般的な吸引力みたいなものはどうにも低いように思われて、せっかくのアルバムの冒頭を飾るのがこれでは些かもったいない気がするのです。

というわけでもっともっと半端ない楽曲が、 2 曲目以降、続きます。「一曲目はボーナストラックみたいなもの」とか KAN はふしぎなことも言ってるんだよな。