最後に映画館に足を運んだのが「崖の上のポニョ」という映画オンチのぼくが、ためしに日本映画「夜のピクニック」( 2006 年公開)の感想文を書いてみます。
主演は多部未華子。ケンタッキーフライドチキンの CM に出ていた女子の正体がかねがね謎でしたが、この映画を観たことによってようやく多部未華子だとわかった次第でございます。遅いですね。
また 3 月 30 日から始まる NHK 朝の連続テレビ小説「つばさ」の主演も決まっていたようで、ひそかに多部未華子の時代が来てるらしい。
映画は観てよかったです。
水戸の高校に古くから伝わるという「 24 時間かけて 80km 歩く」遠足行事で起こったあれこれをセンターラインに、多部未華子とその周縁の人間関係を描きます。
前半からなにやら秘密めいたニュアンスの場面が続いて、こういうのはおそらく何らかの重大な伏線なんだろうなー、とか想いながら、途中の一時間くらいはたいした事件も起こらないため、ひたすらぼんやり観てました。その意味では退屈な映画かも知れません。あやうく寝オチしそうにもなりました。
また途中、静謐としたシーンにそぐわないロックでコミカルなイメージシーンとか挿入されていて、ウケを狙おうとしてるのか、真剣なのか、なにかの暗喩なのかさっぱりわかりませんでしたが、青春映画にしてみればその空回りなロックぶりは欠かせなかったりもするのでしょうか。
髭男爵よろしく「事情が変わった! 続けて」とばかりにストーリーが表向きにいきなり重厚さを増したのが、映画が始まってから一時間を過ぎたころでした。
もうひとりの主人公格の石田卓也と多部未華子との関係性について、多部未華子の友だち役の人が、多部未華子に対してズバリ斬り込むんですね。傍目からは高校生の男女ふたりがお互いに淡い片想いをしているような関係性にしか見えず、同級生からは冷やかされもしている仲なんですが・・・。
「貴子と西脇君、兄妹じゃん」
ここちょっと鳥肌立ちました。実は血ぃつながってた! 異母兄妹だった! っていう。こっそりミステリー仕立てな映画でもあったのです。完全にネタバレですが 3 年前の映画なので勘弁してください。
そもそもそれまでの伏線からしてわかる人には丸わかりなんでしょうが、ぼくみたいなポンコツ脳にとってはストーリーを読み解く上でめっきりわかりやすい分岐点が置かれていて助かりました。親切設計。血のつながりが判明したところから映画はまたガラリと様相を変えてきます。
そんなかなりの「事情」を抱えたままで、わだかまりのありまくった多部未華子と石田卓也は、同級生たちの助けなどもあって、遠足も終盤にさしかかって心身ともにヘトヘトになっているところ、実になにげないタイミングで、ようやくぽつりぽつりと照れくさそうに話し始めます。隣り合ってトボトボ歩きながら。
なにげない場面ですが、けっこうじわじわ泣けました。
「スラムダンク」の最終話の山王戦でそれまでチームメイトとはいえわりと犬猿の仲だった桜木と流川が、勝利を決めて、こうバチーンと手を激しくタッチした場面があるじゃないですか。それと同じくらいグッときました。
決して深い言葉を交わすような間柄じゃないけれども、お互いはそれまでさんざん激しく意識しまくっていて、それがある日ある場所ある瞬間、燃え上がるようなタイミングで、突然スッと通じ合う。
すてきです。
決して青春賛歌ってほど華々しいストーリーではないですけれど、なんかマジメな青春映画でした。甘酸っぱいわ精神的にあやふやだわ恋わずらいだわ進路に不安だわ運命は変えられないわで。たいへんだ。いっそ空回りロックな演出とか省いて、ひたすらマジメに徹してもよかったのかも知れません。