美勇伝説 5 最終伝説 DVD

ジャケ写じゃけぇ

おひさしぶりの更新です。

さて、2008 年 6 月 29 日東京厚生年金会館での千秋楽公演かぎりでの活動休止を前提とした美勇伝ちゃんのラストライブツアー「美勇伝説 5 〜最終伝説〜」の当該オーラスもオーラス大オーラス公演の模様を収録した二枚組 DVD をこのほど amazon にて購入、発売日からやや遅れたもののそれでも金曜日に届いていたので休日につつがなく鑑賞した。

美勇伝コンサートツアー2008初夏 美勇伝説V~最終伝説~ [DVD]

美勇伝コンサートツアー2008初夏 美勇伝説V~最終伝説~ [DVD]

二枚組の内訳としては一枚目はいつもどおりのライブ DVD 、二枚目はライブツアーの中でも主にバックステージの様子を一公演ごとに親切すぎるほど詰め込んだ 65 分の内容となってる。お値段こそ税込定価 4,800 円也と若干お高めな設定で、また最近半ばデフォとなりつつあるオーディオコメンタリー的なおまけも無いものの、石川梨華のこのラストライブツアーでの決め台詞「美勇伝は幸せでした!」を地でいくような中身の充実ぶり。

美勇伝はシングルもアルバムも特にこれといって売れやしなかったし、あまつさえ年末賞レース、紅白歌合戦などともめっきり無縁。平成アイドル史にこれといった爪痕を残すことができたのかといえば正直ぜんぜん微妙なところだけれども、3 年 9 ヶ月かけてぜんぶで 5 つの単独ライブツアーを執り行い、そのすべてが DVD として公式的な映像記録としてきちんと残され、あまつさえラストは初の二枚組でメンバーのおしゃべりが多少冗長とも思えるほどたっぷりと詰め込まれている・・・というのは活動内容に比べて贅沢すぎるほど恵まれまくっている。

また、美勇伝がアイドルグループとして世の中に誇れるようなことは楽曲の質にしろメンバーの歌唱力にしろビジュアルにしろイメージ戦略みたいなものにしろ、「ヲタのどえこひいき」という点を除けば決して多くはないかも知れないけど、ことアイドルグループの『死に方』という点においてだけは、かなり絶妙だった。晩年にはうろうろすっとぼけて迷走、むしろ『徘徊』していたような部分が多少物悲しかったとはいえ、失踪事故天災自殺他殺等によって命脈が絶たれるような不幸な最期に比べると、最終的にはこれといった後腐れもないスッキリとした安らかなご臨終を迎えることができたのではないか。遺族としては穏やかな気持ちで手を合わせている。

美勇伝は徹頭徹尾石川梨華ありきのユニットであった。しかしここまで曲がりなりにも活動を続けてきた美勇伝を自らのタレントとしての最大の拠りどころにするような気持ちは、むしろ三好岡田のほうが圧倒的に大きかったように思われ、ラストツアーを実際に体感し、あるいはこの DVD に接しても『やぁ美勇伝は三好岡田のユニットであったなァ』という気持ちもあらためて湧いてきた。

たとえばラスト公演の最後の最後の長尺 MC でのそれぞれピンでひと節ぶつところの感情の揺れ、表情、内容は、無機質に格付けしちゃうと『 岡田≧三好>>>石川 』。こういう超マジモードなときの石川って基本的には抜群に強いはずなんだけれど、たまたまどこか自分の中での歯車が噛み合ってなかった、っていうか、気持ちがおもいっきり入ってなかった、っていうか、あるいはモーニング娘。の卒業公演の「大好きなファンの皆さん宛にお手紙を書いてきてそれを朗読する」という世紀の奇策が神すぎただけだったのか、ともかくこの美勇伝オーラスにおいての語り部としての説得力は三好岡田に軍配があがる。

石川にとっては美勇伝以前のモーニング娘。時代がなにしろ充実していたわけだし、また美勇伝以降も音楽ガッタスはじめそれなりの身分的な保証もされているのだろう。そこが感情移入に妨げになっていたんじゃなかろうか、といぶかしささえおぼえた。いやさバックステージの様子を見てても石川だって感慨深いというのは十分伝わってくるし、そりゃ結成当初からリーダーとかいってやたら気合いも入っていただろう。もちろんそうよ。ただしかたや三好岡田にとってはデビューしてからこのかた美勇伝が完全に最初のユニットで、あげくもしかしたら最後のユニットになってしまうのかも知れない。その違い。これはもちろんどっちが良い悪いではないわけで、石川梨華というすてき長寿アイドルタレントさんとしては美勇伝とてもしかしたらちょっとした通過点のひとつに過ぎずそれはそれで青春の一ページって地球の歴史からするとどれくらいなんだろうってなもんで重きを置くような場面ではなかったのかも知れない。

とにかく最後の最後になって三好岡田にこれまでになく心打たれたということだ。これでもしも三好の年齢があと 5 歳ほど若く、岡田のキャラクタがもうすこし最初からとっつきやすければ・・・と無いものねだりに虚しさがつのります。

DVD の映像や音声のクオリティにはこれといった欠点など無いように思われた。あの日あの時あの場所の空気感がさほど風味を損なうことなく丁寧にパッケージングされている。一曲ごとに感想を列挙していくのは正直思い入れがありすぎて逆にとっても億劫なので一曲についてだけ言うと、しつこいかも知れませんが白眉中の白眉はやっぱり「 FANTASY 」。リリース当初は歯牙にも掛けていなかったチープなクソ曲がラストツアーのアンコールでイメージ一新、演じる側もステージカメラの割り方も振り付けもファンのテンションもやけくそ気味に暴発し、わけのわからないエネルギーが全方位的に飛散しぶつかりもしくは融合しあって、バカすぎておなかいたいいたいメモリアルな楽曲に化けた空間であった。あれ以上は、もう無い。あるかも知れないけどまた別物。