GAM の 1st アルバム「 1st GAM 〜甘い誘惑〜」をゲオのレンタルで借りた。
商品としては美勇伝「恋するエンジェルハート」と同一の発売日であり、CD 屋に赴いたときは美勇伝さんともども購入しようとレジに商品を持っていくところまでいったのだが、直前になってなんだかイヤ〜な不吉な予感がしたため、美勇伝さんのシングル CD だけを購入する運びとなった。
単純に 3,000 円払うのが急に惜しくなった、というだけのみみっちい理由も当然ある。
しかしそのイヤ〜な予感は不幸にも的中したといってよい。というのはアルバム発売日の翌日、5 月 24 日の木曜日こそが、藤本さんの忌まわしきフライデー記事の詳細が公にされた日なのだった。あまりにもバッドタイミング。人騒がせもいいところで、こんなものアルバムの宣伝にもなりゃしない。
もちろんフライデーされたされない云々は、聴き手の感情にいくぶんかのゆらぎをもたらすといえ、基本的にアルバムの出来不出来とは無関係である。しかし実際あまたのテキストサイトや 2ch に至るまで、このアルバムの評判はことごとく奮わず、「つんく♂はやる気がないなら辞めちまえ」「外注しろ」等の、到底 Berryz 工房や ℃-ute の多くの作品では見られないような辛辣な意見が飛び交う始末なのだった。
そんな社会情勢に身を置く中で「あぁ、なんだやっぱり買わなくて良かった」とホッとするのも悲しいかな道理だろう。
でも、発売日から二週間のときを経て、安価でレンタルしてみた GAM さんのこのアルバムについてぼくは、あまりきちんとした金を落としてないから言えるのかも知れないが、ぜんぜん言うほど悪くないじゃん、と率直に思っている。もう壊滅的なものっすごいのを想像していたためハードルが下がっていたというのもあるのだけれど。事実、わりとずっと聞き続けている。
ただ、ぼくは以前からここでも申し上げているように、ハロプロのアルバムを入手してパソコンに取り込んだ途端、曲目や曲順をセルフカスタマイズせずにはいられない身体だ。もちろんつんく♂のアイドル歌謡センスに関しては全面服従せざるを得ない飼い馴らされ方をしているといえ、曲順フェチのぼくにとって消したり入れ替えたりするのは生理現象。
なにしろ、曲順を真っ当なものに替えるだけで、それぞれの曲の聞こえ方がガラッと変わってくるのですよ。それがお互いのためってもんでしょう、と誰に向かって言ってるのかわからないけど、とにかく自らの欲求に従って、曲順を変えて iTunes プレイリストで新しい命の吹き込まれた GAM の新曲群をひたすら聴きこんでいる日々である。
もともと収録されている CD オリジナルの曲順は、こうなのだ。
1st シングルの「 Thanks! 」を一曲目に、そしてその「 Thanks! 」のリミックス版を最後に持ってくるという『 Thanks! 挟み』とでも命名したくなるような曲順。これは名盤「 TANPOPO1 」でも『ラストキッス挟み』として見られたものでわりとスタンダードな手法である。
しかし困ったことに肝心の「 Thanks! 」が、何回聴いてみても、あんまり耳に居心地の宜しい曲じゃない。いい曲わるい曲ふつうの曲、の線引きが自分の中でどこにあるのか明確な答えは出せないにしろ、あれだけ「スケバン刑事」の宣伝絡みで耳に覚えさせられたにも関わらず、いやだからこそ飽きちゃったのか、リリース当時から現在に至るまでそうよからぬイメージを抱いてしまっている。
あと、三曲目から五曲目が何を考えているのかわりとスロー気味な楽曲三連発という無茶な曲順の組み方をしているため、聴き手の興を著しく削ぐ。一曲づつ見てみればそう悪い曲じゃないのに、もったいない限りだ。
で、自分のこしらえた GAM プレイリストでは、まずもって「 Thanks! 」絡みの二曲を、もうばっさりカットさせて頂いた。しばらく聴きません。さて残るは九曲。とにかく曲順にこだわって熟慮に熟慮を重ねたあげく、とりあえずの完成形ができたので、ここに載せてみたい。
この GAM ならば聴けますよ!
題して『 GAM 再生計画』
だいぶこじんまりとしてしまったが聴き応えはある。アルバム評というわけでもなく、自分が選んだ曲順に関する自己正当化の弁を、以下にいくつか述べていきたい。
一曲目は「 ...H 」。ここはこの曲しか無い! と自信たっぷり言い切れる。タイトルのピンとこなさ具合がハンパではなく字面的にはたしかに最弱に近いのだ。このアルファベット一字でため息をあらわしているようなので、だったらいっそタイトルもためいきまじりのなんとかとかそんなキャッチーな歌謡曲調にしてしまえばいい。しかしそれを言っていくと他のタイトルにも変なこだわりが生じてしまい改変したくなりとても難儀なのでここはグッとこらえて大人の対応。
「 ...H 」のサビは二段階だ。モーニング娘。の八枚目のアルバムのトップを飾り、あまつさえコンサートツアーでもトップの曲順を飾っている「元気+」と同じ構造である。とっちらかり気味のイントロやサビ始まりのハモ歌い出しも実に華やか。今の日ハムでいえば一番に定着している森本哲稀に通じる存在感だろう。こういう野球たとえも泥沼にハマリがちなのでこれだけでやめておく。
ともかく適材適所なので「 ...H 」は先頭に置きましょう。間奏の安っぽいヨレヨレ具合がちょっと腹立つけどスケール感もあって抜群です。
二曲目は「純潔〜 Only 」と「愛情オアシス」で迷ったが、「純潔」の置き場が他にないのでオリジナル音盤と同じくこのポジションに配置。「 ...H 」と激しい楽曲二連続でアルバムに正しく勢いをつけたい。曲の長さも最短で二曲目で飽きさせないようスピード感たっぷりにすぐ終わる。
三曲目はシングルを持ってきたかった。「駆けつけ三曲」という言葉は無いのだろうが、初めの三曲でアルバムの概ねの出来は決まってくる。
で、ここで「 LuLuLu 」を持ってくると、先頭二曲がよほどスピーディで勢いがあるため、比較的同じような曲調の「 LuLuLu 」がいくら総合的な完成度を誇っていても、若干わりを喰う恐れがある。なのでいっそ雰囲気を変えて「メロディーズ」で挑むことにします。
楽曲を終始支配するけだるい空気感がそこまでの勢いを一掃し、間奏でいきなり拍子が変わりかつ不自然さを感じさせないなどひそやかながらに匠の音色がここへきて「メロディーズ」再評価の気運を盛り立てるのでございます。
四曲目の「愛情オアシス」は、つなぎ役、名脇役としての機能がすばらしい。一曲ごとに「愛情オアシス」を配置したいほどだ。のどごしのいいイントロのベースがチェイサーの役割。サビの中華なメロ&背後のシンセがたまらない。聞き比べてみると、松浦さんの名曲「初恋」をおもいっきり下世話にした感じでもある。先述したとおり「愛情オアシス」は二曲目でも悪くないが、出し惜しみしていたいという変な愛着も湧いてこの位置になった。
で、とっておきの「 LuLuLu 」が五曲目。この曲は基本がしっかりした万能選手なので、一曲目でもラスト曲でも、どこに置いてもそれなりの働きをしてくれる。今回は満を持しての五曲目で、レコードでいえば「 A 面」のラストのような役目を課してみた。
六曲目の「甘い誘惑」は食傷気味のロックな曲で、GAM おふたりの歌唱や煽りのテンションも中途半端で煮え切らず、最初は当「 GAM 再生計画」にふさわしくないと除外の方向で検討していた。でももったいないので入れてしまったし、右から左へ聞き流すぶんには案外たのしげでイイ曲なのかも知れなかった。おもいきりよく一曲目にするまでの度胸はなく、「 B 面」の一曲目、が妥当な位置のように思う。
「ここでキスして」はタイトルが椎名林檎の大ヒット曲モロかぶりでこれはひどいなぁ、と悪態をつきながら七曲目にセット。序盤に置くには重く、ラストに置くには軽いため、他との兼ね合いでこの位置に納まった。極めて妥当。あと歌ってる本人たちがいちばん気持ちいいのはもしかしたらこの曲かも知れない。ストリングスの古くさい節回しや大げさなサビメロが「 LuLuLu 」の姉妹版のようでもあり、「 LuLuLu 」好きのぼくとしてはその流れで必然的にいただきます。
八曲目は当アルバム随一のキラーチューン「イチャイチャ Summer 」で決まりだ。
勝手なイメージとしてはモーニング娘。「...好きだよ」に近い。ウィスパー気味の力みを抑えた歌唱法が、松浦と藤本がアイドルシーンの最前線を一歩引いたことを象徴していて、℃-ute 矢島舞美さんの「夏 DOKI リップスティック」の汗だく全力歌唱を見習いなさい、という気にもさせられるのだが、それ以外は鈴木俊介さんの職人アレンジの技もあり、全編シングル級の出来の良さ。温存につぐ温存でラスト二曲に組み込む。
曲順の妙というべきか、これがいくら出来がよくっても、一曲目だったりラスト曲だったりすると、また聴いていて変なんだよなぁ。
そしてラスト九曲目は「愛の船」。壮大でポジティブなスローナンバーで、この位置しかない。これ以上ない大団円で、ベタすぎる展開だろうけど、逆にこの曲をアルバム中途で聴くほうが違和感ある。「ここでキスして」「イチャイチャ Summer 」「愛の船」と続くラスト三曲は動かしようがなかったのである。それはまるで阪神タイガースが優勝したときの抑えの黄金リレー「 JFK(ジェフ・ウィリアムス、藤川、久保田)」のように…。