『段階的試聴』

好きなミュージシャンの新曲が出るというのはそれだけで人生のちょっとしたハッピーイベントであり欣喜雀躍、めちゃくちゃココロオドルわくわくな出来事でございますな。またその新曲を初めて聴く媒体というのはテレビだったりラジオだったり、あるいはすべての情報源をシャットダウンして発売日まで待って一発目からエェ音の CD だったりと実に千差万別であります。先に曲のタイトルだけ発表されていたりすることが比較的多く、作詞作曲編曲者のクレジットなど見ながら、あれこれどんな楽曲であるかと妄想を繰り広げるのもまた一興でしょう。

で、ここ数年の僕といったらもっぱらハロプロ関係でばかりそういうお楽しみを享受してきたわけだけど、またまたこのスペースで性懲りもなく話題にしたいのは KAN の 2 月 22 日発売予定の 4 年以上ぶりになるニューシングル「カレーライス」についてだよ! ・・・あっ、逃げないでこの場から逃げないで気持ちはイタイほどわかるけど逃げないで。あと一杯だけつきあって。

KAN は何ごとをするにもファンサービスが並じゃ無ぇ、って話でございます。それは別にファンに露骨に媚びてるわけでも売り上げアップを目指して血眼になってるわけでもなく、ただひたすら斬新なアイデア(思いつき)を形にしようとする、もう本人が根っこからそういうアグレッシブな性分である。新曲をリリースするにあたって KAN は自身のオフィシャルサイトで「試聴」のページを設けているのだが、これもただの試聴じゃない。『カレーライスができるまで〜段階的試聴』(http://www.kimurakan.com/kanban/kanban008.php)などと銘打った、ひとつの web 企画に昇華しているわけです。

最大のキーワードは『段階的試聴』。これがいったいどういう企てかといえば、1 月 9 日現在、かのサイトでは新曲「カレーライス」の一部だけが聴ける状態になっている。具体的には「ドラム音だけ」聴ける。ってことはすなわち、「試聴」といえども最初から楽曲の完成形をアップして聴かせるのではなく、1 月 7 日から 2 月 1 日までという長いスパンに渡って、最初はドラムだけ、次にベース追加、その次はギター、そしてピアノ・・・といった具合に、曲を構成する楽器のパーツごとに分けてちょっとづつ「段階的に」小出しにして完成形を目指す、という色っぽいじれったい長期的企画を立ち上げた、と、そういうわけなんだねぇ。

およそ 10 年前から現在まで、当初はまだギターとベースギターの区別もついてなかった音痴高校生の僕に、ラジオやライブや楽曲などを通じて音楽の ABC を叩き込んでくれたお師匠さんこそが KAN なわけですよ。だからもう「原点」ね。といっても未だに楽器なんか弾けやしないし楽譜も別に読めやしないんだけど、たとえばハロプロ楽曲のアレンジメントなんぞに十人並みそれなりの興味が持てるようになったのも KAN のせい。そんな KAN が 2006 年の今、自らの新曲を、手間のかかることにわざわざ楽器単位に分解して、ようやく昨年に開設された自身のオフィシャルサイトで一から聞かせてくれている、と。

こんなに嬉しい原点回帰は無いわけですよ。一蓮托生であります。