すこしふしぎ・三好絵梨香

石川梨華の脇を固める三好・岡田コンビというのは今や何のてらいも迷いもなく存在自体が下ネタである。ツアー当初から話題沸騰であったこのふたりによる「セクシーポーズ対決」やら「セクシーことば対決」やらのお下劣 MC コーナーは、鬼の居ぬ間になんてろーというか女子校の風紀委員長こと石川さんのいない間にあれこれやりたい放題で、どちらか一方がセクシーアピールを露骨に繰り出せばもう一方がそれに乗っかる、というエロのスパーリング。

しかもこれがふたりの発言にどこかおかしなところがあれば最終的には客がつっこむ、という異常な前衛漫才ぶりで、ネプチューンの名倉がいないときの原田と堀内が自由な掛け合いをしている様子を想起させる。東京二日目の昼公演では DVD 収録のカメラが入っていたんだけどそんなこともまったく関係なく正直「もういいよ」というくらいの満開ぶりだった。

しかし三好は明らかに自発的にエロいのだが、僕は三好にはエロさを感じた試しが一度もない。たしかに観念的ではあるのだが即物的ではない感じである。たとえばおなか丸出しの格好で腰をくねらせながらセクシーなことばとして「オンナの、く・び・れ」とか言い出したときは会場内がフゥーーとバカ丸出しの歓声に包まれたものだが、どうも三好のこの手のエロアピールが、実にうさんくさい。におう。

でひとつ確信したことがあるのだけど、三好は本来生物学上の男子としてこの世に生命を受けたのだが、おそらく十代前半くらいのひどく悶々とした時期に自分の部屋に正五角形の魔法陣をつくりエロイムエッサイムと呪文を唱えて呼び出した悪魔に死後の自らの魂の行先を譲渡したのと引き替えに「女の子の身体が欲しい!」という願いを叶えることに成功、それ以来三好は自らの男子としての肉体を棄てた代わりにお目々ぱっちりで細すぎず太すぎずのごく標準的などこぞの女の子の肉体を丸ごと借りて第二の人生をスタートしたのだ。

でなんだかんだ成長して札幌のタレント養成所に入り、統太郎の指揮のもと「つぼ八」で精をつけ、またうまいことハロプロに潜り込んであまつさえ美勇伝に抜擢され、自分が本来男子なだけにヲタの気持ちが本能的に分かってるぶんそっち方面に関するファンサービスはあけすけで「石川のふともももおしりもセクシーだ」とかいうありがたい情報を提供できるまでのポジションを勝ち獲った。

しかし如何せん肝心の本人にリアリティがない。実体がない感じ。だいたい名前からしておかしいわけで、三好の「好(よし)」は吉澤の「吉(よし)」だし、絵梨香の「梨香(りか)」は石川梨華の「梨華(りか)」だし。「三好絵梨香」っていかにも本名みたいな顔してるけど阿佐田哲也とか江戸川乱歩並の芸名だと思う。たぶん本名は武田武雄とか。ちなみに今でも声が低いままなのは「そこまで面倒見切れない」って悪魔が言ったからだし、たぶん毎晩お風呂に入っては今でも「これが女のからだ・・・」ってニヤニヤしながらあらぬことをしているはずである。

いっぽう三好(男子時)の肉体のヌケガラは、そっくりそのまま三好に肉体を乗っ取られた女の子の魂が引き継いでおり、近況としてはジャニーズ Jr.の一員で二十歳でベテランの部類に入りながらもいつかアイドルとして華開くことを夢見ながら山Pと亀梨のバックとかで日々がんばっているわけで、おれがハロプロであいつがジャニーズで状態。

さてそんな具合に目下絶好調の美勇伝の三好ではあるけれども、ある日いきなり乙女のようにしおらしくなって、石川をはじめハロプロメンバーに「胸を触る」などのちょっかいを出さなくなり、これまで連発してきたような卑猥な単語(※「女医」「秘書」「ベッドまわり」「網タイツ」「濡れた下着」「メス」「貴様」等)をまったく発しなくなるときが来るかも知れない。それはきっと悪魔との契約が切れたときである。そうなってから初めて我々は、今の美勇伝にまわわる諸々の愉快事を、まるで夢のような日々であったと泣きながら思い返すのであろう。