くちびるから媚薬

M-10「唇から愛をちょうだい」は一聴してからというもの音像のあまりの突飛さ具合に耳を奪われっぱなしで歌詞を今ようやく初めて見てみた次第である。A メロでめちゃくちゃな言語感覚でさんざんハネておきながら B メロでちょっとだけおとなしくなって、サビでおもいっきりふつうのことを言い出す、って構成になっていた。M-3「愛〜スイートルーム〜」と同じ。ちなみに M-3 の歌詞は深読みしようとすればするほど頭が混乱する難物で、今のところぼくが勝手に出している結論としては「つんく♂はこれまで日本の歌謡史上いちども用いられたことのない歌詞を使用しようとした」というのがある。「与謝蕪村」とか軽快なメロディに乗せて歌われるなんてこれが最初で最後なんじゃないか。だから単純に音の響きとして飽きがこないのかも知れない。やぁ M-3 大好きだな。間奏が長めに設定されてるのも心地よい。とかアルバム全体を行ったり戻ったりしているからこの「スイートルームナンバー1」に関する記述が何日経っても終わらないわけで、そろそろスパートしたい。で、この問題作 M-10 は序盤の石川梨華ドスキャワ歌唱のアクの強さも手伝って「メロン記念日っぽい」という印象が強かったのだけれど、何回か繰り返し聴くうちにメロンよりもむしろ 2003 年のハロプロシャッフルのひとつ、 SALT5「GET UP!ラッパー」にけっこうイメージがかぶると思った。一拍目からの「どっ、どっ」というリズムパターンとか高音のところでオリエンタルなシタール的な音が鳴ってるのとか、あと「♪恋の晩餐よ Love Me Do?」から始まる A メロの繰り返しフレーズが、まんま「♪GET UP! RAPPER & GET DOWN」だと思うんだけど。完璧に同じとは言わないまでも、それなりに、ね。誰も指摘してないようなのでしたり顔で書いてみた。あと「ラッパー」という言葉から連想したところによると、美勇伝は今のところ「ラップをしないユニット」という方向性で決定のようだな。このアルバムはもちろん既発シングルのカップリングにもひとつとしてラップ入りの曲は無かったと思う。いやたまたまかも知れないけど。美麗で女の子らしくダラダラしないスカート衣装を身に纏ってかっちり背筋を伸ばしながらきまじめに、ときにへんてこな振りで踊る。それが美勇伝。なるほど石川梨華のユニットである。