「モヤモヤさまぁ〜ず2」ゴールデン進出の勝算

テレビの4月改編でテレビ東京系「モヤモヤさまぁ〜ず2」が、現在の木曜深夜0:12の「バラエティ7」枠から、日曜夜7時に時間帯移動、いわゆる「ゴールデンタイム」へ進出するようです。(参照:Webザテレビジョン)

予告編によると、次週の「モヤさま」で、伊藤プロデューサーの口からさまぁ〜ず大江麻理子アナに対して「移動するよ」という旨が伝えられるみたいです。そのリアクションがまずは楽しみ。

しかし深夜の人気バラエティ番組がゴールデンで放送されることについて、否定的な反応は決して少なくありません。


深夜時代に培った独自の番組カラーが一変し、もともといたコアなファンは流出。新規の視聴者も取りこぼしてしまい、結果的に視聴率も低迷、あげく番組自体も終了してしまう……。

そんな苦い経験を我々は幾度となくしてきました。「くりぃむナントカ」「Matthew's Best Hit TV」などがその代表例でしょうか。

また現在も放送中ですがゴールデン進出後の「やりすぎコージー」も深夜の頃の過激さが影を潜めた、という印象を持たれがちです(実際はそうでもないんですけどね。最近の田原総一郎の回とか)。

対照的に、たとえば「タモリ倶楽部」などは大御所タモリを擁しながらも深夜番組としてのくだけた体裁を一貫して崩すことなく、未だにぶ厚い支持を集め続けています。「鑑」とさえ言えそう。

そこへもってきて今回モヤさまの「ゴールデン進出」。一見輝かしい字面とは裏腹に、いくつかの懸案事項を候補に挙げることはできそうです。

さまぁ〜ずと大江アナ3人だけが培ってきた小さな世界。ゴールデンで予算が増えることによって、余分なレギュラー出演者が増えたりするのではないか、とか。町歩き以外のファミリー向けグルメ企画みたいなもんが始まってしまうんじゃないか、とか。

つまり「深夜帯ならではのモヤモヤ感が失われてしまうのでは?」というそれこそモヤモヤした懸念です。


ただ、ここまで書いてきてアレですが、個人的にはあまり心配していません。むしろゴールデン進出で救われる命もあるんじゃないだろうか? と楽観視しています。

さまぁ〜ずと大江アナの3人体制は、仮に女子アナの枠が大橋未歩アナや松丸友紀アナでも成立していたのかも知れませんが、今となってはその魅力が広く世に伝わることになったという意味で大江アナの「出世作」だし、もはやこのメンバーは切っても切り離せません。主要の出演者が固定されているというのは頼もしいです。

そこが諸刃の剣でもあるっちゃあるんですよね。一歩まちがえるとマンネリに陥るのは道理です。現在多くのバラエティ番組はごく自然に「放送回ごとに別々のゲストが出演する」というシステムを採用しています。常にほどよい新鮮味や刺激を番組に与えるという意味で、ゲスト制の意義は十分すぎるほどある。

その点、モヤさまはストイックなほどにゲストが出てこない。せいぜい突発的にさまぁ〜ずの後輩・つぶやきシローがローなテンションで登場するくらいです。

固定メンバーだと、どうしても同じようなやりとりになりがち。ガチャガチャ遊び、喫茶店で黙り込んで「誰か喋れよ!」、大江アナへのプチセクハラetc……。それがモヤさまならではの「お約束」「待ってました!」的なベタであり強みでもあるのですが、このパターンに辟易する人がいてもおかしくありません。

その点、この移動がいい気分転換になるんじゃないかな、と思うんですよね。

これで完全に別の番組になっちゃうのなら元も子もありませんが、希望的観測も含めて、やることはさほど変わらないはず。もちろんこの先の番組の方向性、出演者などがどう変容していくかなんてわかりません。しかしゴールデン進出は「ちょっとだけ新しいモヤさま」を再構築する絶好のチャンスだと思うんです。HD化もしそうですしね。


それともうひとつ、モヤさまは過去に何度もゴールデンタイムでSP版を放送しています。ゴールデンでの「実績」があるんです。とはいえ視聴率的には10%を超えるようなことが一度もなかったらしいのですが。

たとえば「月9」の裏番組として放送されたことが2度ほどあり、そのときの戦車に竹やりで突っ込んでいく感は半端なかったです。また昨年12月30日に放送された2時間半のSPは、TBS系「レコード大賞」や日テレ系「世界仰天ニュースSP」テレ朝系「ナニコレ珍百景SP」など強力な年末番組の中で、視聴率「3.0%」と玉砕したようでした。

ただ、そうしてゴールデンでは何度も討ち死にしたにも関わらず、なおゴールデンでレギュラー化されるという事実。ということはもしかすると、モヤさまに視聴率はハナから期待されてない気がするんですね。もしかしたらDVDでペイ出来るから視聴率は関係ない、みたいな特例扱いなのかも知れません。細かい事情は知るよしもありませんが。

視聴率が3.0%だったという昨年末の「モヤさまゴールデンSP」は、個人的な率直な番組の感想として、超おもしろかったです。東京の花小金井を舞台に、町の少し変わった人(「カメ親父」等)と触れあったり、伊藤プロデューサーの両親が出てきたり、珍しく一泊してみたり。細かいネタでくすぐってきたりもして、すっかり釘付けでした。

少なくとも自分にとっては、その放送が深夜でもゴールデンでも、それが「モヤさま」である限り、さほど印象が変わることはないのかな、と今のところは思っています。