石川梨華25歳のバースデーライブ@恵比寿リキッドルーム

アイドルファンとしてのぼくは「石川梨華」その人なくしてありえません。

モーニング娘。第三次追加オーディションで合格。2000年5月17日に発売された「ハッピーサマーウェデイング」でCDデビュー。それ以降の歴史はあまりに長大すぎて語り尽くせませんが、とにかくひたすら愉しいことばかりで、この10年は石川さんと共に生きてきました。

2005年に石川さんがリーダーとして発進したユニット「美勇伝」。アイドル界の盲点的存在でしたが、個人的には5回おこなわれた全国ツアーすべてに必ず一公演は足を運ぶなど、小さな世界で可能なかぎり遊ばせてもらいました。

そんな美勇伝は、メンバーの脱退や追加、スキャンダルなどといった波風をなにひとつ立てないまま、2008年6月29日、東京厚生年金会館での「美勇伝説5」公演をもって、極めて円満に、静かに熱く、「活動終了」という幕の引き方をしました。

それ以降、音楽ガッタスHANGRY & ANGRYなどでの音楽活動、あるいはちょこちょことしたテレビ出演などで、石川さんはアイドルとしての活動を続けています。バリバリやってる。

ただ、美勇伝の終了をきっかけに、ぼくの中での石川さん熱は、少しづつ冷めていきました。

モーニング娘。加入当初は15歳だった石川さんも、もはや20代半ば。少しづつ身体や顔が丸みを帯び始め、活動を共にするメンバーが後輩ばかりになることで、妙に小姑的なキャラクターが染みつきつつあります。

全国的な知名度や人気を獲得しながら、デビューから10年経った現在でもなお、なんの後ろくらい部分もいっさいなく(それは奇跡的なほどに!)まっとうなアイドルであり続けている石川さん。アイドルがアイドルとしてファンを裏切らないままに年齢を重ねるという、ある意味では究極の形を体現しているといえます。

けれども、高潔であればあるほど、「特に話題性が何もない」というこの絶対的なジレンマ。ガッタスもハンアンもおなじみ「全力力」で頑張っているのですが、決して人口に膾炙しているとは言えない。

そんなちょっとした積み重ねによって、次第にその存在は朧気になっていき、たまのテレビ出演も追ってはみているものの、雑事に追われて、気持ちはますます遠ざかっていくばかり。と、自分勝手な状態が続いていたのです。

石川梨華のはじめてのバースデーライブが、1月19日という25歳の誕生日のまさにその日、恵比寿リキッドルームでおこなわれました。ぼくはチケットも極めて申し訳ない方法で入手し、グッズも買わず、鑑賞することになりました。


「そういえば『石川梨華ソロライブ』って、10年来の待望だったんじゃなかったっけ」

ライブ中に気がつきました。それくらい忘れかけていたし、また一瞬にして熱を取り戻しました。


バンドメンバーはドラムとキーボードとベースとギターの4人。いずれもベテランの風情。

そんなステージに石川梨華さん登場。一曲目は「ハッピーサマーウェディング」(2000年/モーニング娘。)です。25歳の石川梨華の誕生日に、「アイドル石川梨華」の誕生した曲を歌っている。間奏のセリフはオリジナルで中澤さんが言っていたものに忠実。矢口さんパートの「アチョー!」なんて跳び蹴りも自分でやってました。

超たのしい。

( ^▽^) < あ、そうだ、あけおめ!

曲終わりのMCで石川さんは満面の笑みでこう言いました。このわざとらしさ! 愉しそう! その場かぎりのライブなテンションに支えられている部分もあるけど、気がつけばその耳心地のいい声に彩られたチャキチャキなMCに、どっぷり浸っておりました。この感覚だ。「( ^▽^)<アラサーでなにがわるい」的な自虐が随所に織り交ぜられるのが石川さんの年の功。

今回のライブは「オール梨華ちゃんプロデュース」で執り行われているとの宣言も飛び出します。選曲や演出はすべて石川さん本人によるものだそう。ライブ開催が決定して以来、あれこれ策を練りながら、自宅でひとりニヤニヤが止まらなかったそうです。

アイドルの「セルフプロデュース」には危険がつきもので、ともすれば誰も望んでいないような、内省的、先鋭的、アーティスティックな方面に走ってしまって、ファンを置いてけぼりにしかねません。

石川さんは、100%そんなことがないんです。ファンの気持ちをわかりすぎるほどわかっている。ものすごいモチベーションで期待に応えようとするし、もちろんいい意味で期待を裏切ってもくれる。そういう部分の「共鳴度」みたいな部分は抜群です。「こういうセットリストにしろよ」みたいな身勝手な要求をするのがファンですが、その最大公約数からブレることがなぜか無いんです。こんなこと言うのは気持ち悪いんですけど、完全に事実だから仕方がない。

本人が自信たっぷりにお届けしてくれる「オール梨華ちゃんプロデュース(All Rika-chan Produce)」。こんなに安心して身を委ねられることはないです。石川さんの自己プロデュース能力の高さは異常。


石川さんらしい演出がいくつかありました。

一度ステージが暗転して石川さんが下手にハケると同時に「ハピサマ」のインストが流れ出します。「さっき歌ったし、なにかな?」と思っていたら、リキッドルームの客席に横付けされている大型スクリーンに映像が流れ出します。すると石川さんがこれまで参加してきたユニットやソロのPVやその曲にまつわる映像が、最新のHANGRY&ANGRY「Top Secret」から時代を遡るように、次々と矢継ぎ早に流れてたのです。

時系列を遡っていくと、さすが10年。膨大な数です。映像の中でだんだん若返っていく石川さん。ほぼぜんぶ観てきた。「あややムwithエコハムず」は盲点でした。後のMCによると石川さん本人からの提案でこういうVTRが作られたそう。幕間の衣装替えの時間を利用した、超すばらしい趣向だと思いました。VTRの最後に挿入された石川さん本人の2010年現在の姿による

( ^▽^) <愉しんでいただけましたか?

的なメッセージは丸い顔で、これも時代の流れを痛感させられます。

ちなみにその動画が「DohhhUP!」にさっそく掲載されています。また観入ってしまった。

また、石川さんがアコギに挑戦したという3年前の映像も公開されました。石川さんの家にしか保管されていない貴重映像だというふれこみです。曲は「人間ってシャララ」。モーニング娘。のミュージカル「LOVEセンチュリー〜夢はみなけりゃ始まらない〜 」の石川さんソロ曲ですね。演奏というのも憚られるギター弾き語りの映像が流れていました。かなり拙い出来でしたが、その映像を見ているステージ上の石川さんがニコニコでノリノリだったので許せます。

その映像の勢いで「理解して!>女の子」(2001年/石川梨華)というファンクラブ限定で発売された曲が七曲目で歌われていました。本人のナマのアコギ弾き語りからの導入で、やがてバンド演奏に突入します。これまでもカジュアルディナーショーで演奏されたことはあるらしい、梨華ちゃんアンセム。最高の演出で披露されました。

アンコールの登場の仕方もよかったです。

すばらしいライブでアンコールの声にも熱がこもっていたわけです。一般的には、そんな熱気にこたえて「アンコールどうもありがとう!」とか言いながらステージ中央に駆けていったり、もしくは音楽が流れてくると共にいきなり歌い出す、なんてのがハロプロ周辺の習わし。

アンコールでは、石川さんがなぜかドラムセットの椅子に座っていました。そしてなんと阪神タイガースの応援歌「六甲おろし」を、リズムを刻みながら、バンドと共に演奏し始めたのです。ドラム叩きながら歌うのです!

石川さんは父親の影響で生粋の阪神ファンで、たしか昨年は甲子園に観戦に行っている様子もテレビに映ったりしてました。

甲子園球場で買ったというトラの耳を模したカチューシャ(って言うんでしょうか)を頭にセットし、タイガースカラーに染まった石川梨華グッズを身につけて「六甲おろし」の大合唱にリキッドルームが沸きます。たまりません。

石川さんはなんだかんだで今回「ギター」「タンバリン」「ドラム」と三つの楽器を、正直かなり拙いながらも演奏してました。ちょとづつ広がる芸域。この亀の歩みを共有していくのもアイドルを嗜む上での礼儀なんですね。

みずから「飽き性」を自称してるように、たぶんどの楽器もエキスパートにはなり得ないな、とは思います。ギターもライブ一週間前に慌てて再開したとか言ってました。でもそういった手の広げ方もすべて引っくるめたアイドルとしてのエキスパートだから、それくらいがちょうどいいんです。


あとは披露された曲ごとの短観。

二曲目は「恋をしちゃいました!」(2001年・タンポポ)。これまでナマで本人が歌ってるのを観たことが一度もなく、率直に感動しました。こういうバリ可愛い楽曲を往時と何の遜色もないテイストで歌いこなせる石川さんの凄さ。

三曲目は「恋人は心の応援団」(2001年/カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。))。連続で王道の人気曲をたたみかけます。とはいえ石川さんもこの前後のMCで「( ^▽^) <みなさんすこし硬い」的なことを言っていたとおり、まだこなれてませんでした。。結果、オールドスタイルのAメロでの「梨華ちゃーん!」みたいなかけ声やPPPHに収束されていくのです。一回限りなのでお約束もこれまで培われてきたこと以外は特になく、居心地がよかったです。

四曲目は「まごころの道」(2005年/美勇伝)。今回のライブ唯一の座って歌うしっとりバラード。五曲目「いいことある記念の瞬間」(2002年/モーニング娘。)では客席を巻き込んだウエーブ。

と、この曲終わりで暗転して石川さんがカッコよく一回引っ込むんですが、「ゴトッ」ってマイクから大きな音がして何かと思ったら、石川さんが豪快にコケてました。この決まらなさもまた石川さんだ。

六曲目はモーニング娘。オーディションのときに歌ったという「Depend on you」(1998年/浜崎あゆみ)。これは隠し球でしたね。本人の思い入れもあるし記念の曲である。これまで披露する機会がなかったのを「オール梨華ちゃんプロデュース」だからこそ実現したわけで、いい物を聞かせてもらいました。

八曲目は「ザ☆ピ〜ス!」(2001年/モーニング娘。)でこの曲を石川さんソロで生バンドで聞けちゃう2010年はいい未来。立て続けに九曲目「恋するエンジェルハート」(2007年/美勇伝)。まだ記憶に新しい美勇伝の昂ぶり楽曲で本編はシメです。ちょっぴり曲数が少なめかな?とも思いましたが欲張りすぎですね。

また「六甲おろし」アンコールのあとにはサプライズゲストとして元美勇伝三好絵梨香バースデーケーキの台車を押しながら登場。やがてカメラマンを装った元モーニング娘。保田圭も同じくサプライズで登場します。「ハッピーバースデー」を流れ的に2回、みんなで合唱しました。

アンコール一曲目は「初めてのハッピーバースデー!」(2001年/カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)。今回のライブのテーマ曲ですね。たぶん一生モノの楽曲だと思います。

( ^▽^)<でも、このままじゃ終われない!

という美勇伝のとき以来の嬉しい決めゼリフを挟んで最後の曲は「FANTASY」(2007年/美勇伝)。美勇伝ベストアルバム唯一の新録曲にして、音源が発表された段階では「駄作」との評価に甘んじていたものの、ライブで実はとんでもない曲だったことが判明したという忘れられない曲。今回は三好も飛び入りして共に歌います。

一度死んだヲタが、このとき甦りました。

曲が終わって石川さんがステージからはけても、終演のアナウンスは聞こえてこない。手拍子しながら粘っていたらダブルアンコールで再々登場しました。

( ^▽^)< これやるの忘れてたね。せーの、ハッピー♪

これで本当に〆です。ぼくは「ハッピー」と刻印されたピンク色のiPod nanoを今でも使っています。これもまた一生モノの金言になりそうです。


ってことで、要するにめちゃくちゃ楽しめました。

今回は石川梨華の集大成のようなステージでしたが、もしも来年同じようなバースデーライブがあるとして、それが「オール梨華ちゃんプロデュース」によるものならば、きっとまた別のハッピーを我々に見せつけてくれるはず。

ありがたい存在です、ほんと。